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北陸を舞台とする小説 第29回 「富山地方鉄道殺人事件」(西村京太郎 著)
- 2026/2/22
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北陸を舞台とする小説 第29回 「富山地方鉄道殺人事件」(西村京太郎 著)

「富山地方鉄道殺人事件」(西村京太郎 著、新潮社<新潮文庫>、2021年3月発行)<文庫本>
<*単行本は、2019年1月、新潮社より刊行>
<著者紹介>西村京太郎(にしむら きょうたろう)(文庫本掲載著者紹介より・発行当時)
1930年(昭和5年)東京生まれ。1963年『歪んだ朝』で「オール讀物」推理小説新人賞、1965年『天使の傷痕』で江戸川乱歩賞をそれぞれ受賞。1981年に『終着駅殺人事件』で日本推理作家協会賞を受賞する。2004(平成16年)には、日本ミステリー文学大賞を、2019年には「十津川警部」シリーズで吉川英治文庫賞を受賞した。鉄道ミステリー、トラベルミステリーに新境地をひらき、常に読書界の話題をさらうベストセラーを生み出している。 <追記 *2022年3月逝去、享年91歳。1930年~2022年>
本書の著者・西村京太郎(1930~2022)氏は、鉄道や観光地を舞台にしたトラベルミステリーの第一人者で、十津川警部が活躍するシリーズなどの人気推理作家で多くの作品がテレビドラマ化されている。また多作で600以上の作品を世に送り出した。昭和5年(1930)東京生まれで、人事院に入ったが、作家を志して退職。トラック運転手や私立探偵などを経て30代の前期から作家活動に従事し、昭和38年(1963)「歪んだ朝」でオール読物推理小説新人賞を、昭和40年(1965)には、「天使の傷痕」で第11回江戸川乱歩賞を受賞。初期は社会派推理小説を執筆していたが、その後、トラベルミステリーの分野を開拓。昭和53年(1978)に発表した「寝台特急殺人事件」がベストセラーになって以来、十津川警部シリーズは数多くテレビドラマ化され、人気を集めた。晩年には、自伝的ノンフィクション「一五歳の戦争」を執筆するが、令和4年(2022)3月に逝去。本書は、多作で知られる西村京太郎氏のトラベルミステリーで人気シリーズの十津川警部シリーズの一作品で、2016年1月、新潮社から「神戸電鉄殺人事件」刊行以来、毎年1月に、「琴電殺人事件」(2017年1月発行)、「広島電鉄殺人事件」(2018年1月発行)と続く「電鉄」シリーズの第4弾。路線距離100キロ以上と地方鉄道ながら有数の規模をもつ富山地方鉄道が舞台。
大学を卒業後、小さな旅行会社の企画部で働いている牧野順次のもとに、大学の同級のマドンナで片思いだった麻美から突然、電話が入り、8年ぶりに会うことになる場面から本書ストーリーは始まる。麻美は、大学を卒業すると同時に大学同級の白石文彦と婚約し、卒業後3年目に結婚していたが、麻美の夫・白石文彦は、大学のクラスでは一番の秀才で、国家試験に一番で合格し、卒業と同時に内政省に入り、順調に出世街道を歩いていた。麻美から、夫の白石文彦が1週間前に出張に出たままで、姿を消してしまったが、白石文彦の内政省の上司からは、仕事が済めば帰ってくるから探すなと言われ、警察に届けたりすれば、仕事で出張に行っているなら、夫に迷惑をかけてしまうので、自分で探そうと思うも、地理に疎く、旅行会社で働いている牧野が力になってくれるのではと相談を受ける。白石文彦は、「私の予定は宇奈月から黒部への旅。内政省の仕事で行くので、絶対に探さないでほしい」と書き残していた。
牧野順次は、白石麻美とともに、東京から北陸新幹線で富山まで行き、富山地方鉄道で、電鉄富山駅から富山から黒部方面へ行く宇奈月温泉行きの列車で、まずは宇奈月に向かう。宇奈月温泉に着いた翌朝、黒部峡谷鉄道の宇奈月駅からトロッコ列車に乗ろうとしたら、黒部峡谷を走るトロッコ列車の黒部峡谷鉄道の終点・欅平で、若い女性が駅の中で倒れていた死体が発見されたばかりというニュースが入ってくる。被害者は、白石文彦を追っていた東京の大手新聞の中央新聞の女性新聞記者・川野ゆきで、毒殺されていた。白石文彦は、保守党の若手のホープで将来の総理大臣候補と言われ、現役の総理大臣の覚えも良く,49歳という若さで内政大臣に抜擢されていた大河原大臣から信頼され、数々のスキャンダル対応にもあたってきていて、政界スキャンダルの鍵を握っていた。独身の大河原大臣は内密に現役総理大臣の娘と婚約していたが、数々のスキャンダルを抱え、また、川野ゆきという女性新聞記者との関係も噂されていたため、内閣官房長官から警察庁を通じて、警視庁に情報収集を依頼してきて、警視庁の十津川警部に、捜査の主力は富山県警本部の富山県黒部市での殺人事件に、警視庁も内密に連携して事件捜査にあたることになる。
こうして、十津川警部は亀井刑事とともに、北陸新幹線で黒部宇奈月温泉駅で降り、黒部に向かう。黒部というと、黒部ダムしか思いうかばない二人だったが、北は日本海に面し、中央に宇奈月温泉、南は黒部川の源流までと、黒部市はなかなか大きな都市だと分かり驚いたが、北陸新幹線の黒部宇奈月温泉駅で降り、日本海に近い市街地にある黒部警察署に寄り、その日のうちに宇奈月温泉まで移動。翌朝、黒部峡谷鉄道の宇奈月駅から欅平駅までトロッコ列車に乗り、欅平の旅館に宿泊。その後は、宇奈月温泉に戻り、富山市、更に富山地方鉄道立山線の立山行きに乗車し、立山町から、立山黒部アルペンルートで黒部ダムに向かう。女性新聞記者・川野ゆきが殺害された、その先に行くことが難しい剣峻な黒部峡谷鉄道の終点の欅平駅から、川野ゆき殺害犯人はどこに消えたのか?という謎の解明にも取り組むことになる。白石文彦の失踪、女性新聞記者の殺害、さらに、その後、判明してくる関係者の事件などの背後には、政界スキャンダルの存在が見え隠れする。ストーリーのきっかけとなる牧野順次や白石麻美は、主人公か準主人公的なポジションかと思いきや、その後は、意外な描かれ方で、特に、ヒロイン的な存在かもしれないと思った白石麻美は、本書第5章「白石麻美の秘話(ひとりごと)」で明らかになるが、全く意外な顔を持った女性で驚く。終盤のラストシーンで、十津川警部は、絶対絶命のピンチに立たされるが、最後の大きなどんでん返しの展開は、小気味よい。
本書ストーリー展開の時代について、具体的な年代は明記がないが、2015年3月14日の北陸新幹線の金沢延伸以降で、牧野順次と白石麻美が再会する6月15日が金曜ということで、2018年と分かるが、牧野順次が富山市内のコーヒーショップで新聞を読む場面があり、一面は、相変わらず米朝首脳会談のニュースだと書かれていて、これは、2018年6月、シンガポールで行われたトランプ大統領と金正恩との間の史上初の米朝首脳会談のことと分かる。本書の主たるストーリー展開場所は、富山県内で、その中でも宇奈月温泉や黒部峡谷がある黒部市。2006年3月に黒部市及び下新川郡宇奈月町が合併しているが、富山県黒部警察署は、黒部市の中心部である黒部市三日市にあり、三日市は江戸時代は北陸道の宿場町として栄えたところ。電鉄富山駅からの富山地方鉄道本線の終点は宇奈月温泉の宇奈月温泉駅や、黒部峡谷鉄道会社が運営する黒部峡谷鉄道本線(宇奈月駅ー欅平駅 20.1km)は、本書で頻繁に登場するが、ともに富山県黒部市。黒部市以外でも。富山県内では、富山市内や、立山町がストーリーに登場。黒部市も大変広い市ながら、立山町も非常に広い町。富山地方鉄道立山線の終点・立山駅だけでなく、立山黒部アルペンルートで黒部ダムにも十津川警部たちが訪れているが、黒部ダムも、黒部市ではなく立山町。富山市内では、富山城址公園、富山城、富山市郷土博物館のことにも触れられている。
最初の殺人事件が、黒部峡谷鉄道会社が運営する黒部峡谷鉄道本線の終点・欅平駅で起こってはいるが、本書のタイトル「富山地方鉄道殺人事件」通り、富山地方鉄道が。本書ストーリーでは重要な存在。「富山地方鉄道は面白い私鉄で。富山地方鉄道には、本線、立山線、不二越・上滝線の3つの線があり、本線は宇奈月温泉行き、立山線は立山行き、不二越・上滝線の岩峅寺(いわくらじ)行き。さらに、富山の市内を走る路面電車が、同じ富山地方鉄道の経営で、全部の路線の合計距離は100kmを超す。」と紹介され、富山地方鉄道は『地鉄』と呼ばれるのに、富山地方鉄道には、電鉄富山、電鉄魚津、電鉄石田、電鉄黒部と、駅名にはなぜか『電鉄』とついている駅があるのか?という話も付け加えられている。本書では、宇奈月温泉の拠点として富山地方電鉄本線の終点・宇奈月温泉駅や、事件の真相を追う中で富山地方鉄道立山線の終点・立山駅も登場人物たちの移動に利用されているが、ストーリーの終盤のラストシーンでは、富山地方鉄道が、とある登場人物が、電鉄富山駅で駅員に「『地鉄で一番小さな駅はどこか』と、答えが難しい質問をするシーンがあるように、意外な形で大きくクローズアップしてくる。富山地方鉄道本線(宇奈月線)の新黒部駅から宇奈月温泉方面に2つめの若栗駅(富山県黒部市若栗)という富山地方鉄道の小さな無人駅が、どんでん返しのストーリーの舞台に選ばれている。
目 次
第1章 宇奈月へ
第2章 特別捜査
第3章 牧野順次の話
第4章 立山黒部アルペンルート
第5章 白石麻美の秘話(ひとりごと)
第6章 記者・大久保の眼
第7章 富山地方鉄道無人駅
<主なストーリー展開時代>
・2018年6月~7月
<主なストーリー展開場所>・
・富山県(富山市・黒部市・宇奈月温泉・立山町) ・東京 ・石川県(金沢市)
<主な登場人物>
・牧野順次(小さな旅行代理店の企画部勤務のサラリーマン)
・白石麻美(牧野順次のS大学のクラスメートで、大学時代のマドンナ。白石文彦の妻)
・白石文彦(麻美の夫で、内政省秘書課の課長補佐の30歳のエリート官僚)
・大久保明(東京の中央新聞の男性記者で、牧野順次や白石夫妻と大学時代の同級)
・川野ゆき(東京の中央新聞の女性記者)
・十津川警部(東京生まれ東京育ちの警視庁捜査一課の警部)
・三上刑事部長(警視庁捜査一課で十津川警部の上司)
・亀井警部(青森生まれの警視庁捜査一課の十津川警部の良き相棒)
・田島(十津川警部の大学時代の同級生。中央新聞の社会部の記者)
・大河原(49歳の第三次佐藤内閣での内政大臣で、保守党の若手のホープで49歳。離婚歴がある独身)
・佐々木一朗(45,6歳の内政大臣私設秘書)
・柴田(大河原大臣の秘書で若手の有望格。30代で東大とハーバードの大学院を卒業)
・木村弥生(大河原大臣と交際の噂のあった35歳の女優)
・川野努(女優の木村弥生の身辺を調査していた私立探偵)
・田村(中央新聞東京本社のベテラン記者)
・佐藤総理大臣
・佐藤香織(佐藤総理大臣の長女。大河原大臣と婚約)
・大河原大臣の元妻(生け花の家元の遠縁で、東京で華道教室を開いている)
・小野(富山県警の若い警部)
・小島敬典(2年前、55歳で事務所の20代のバイト男性に殺された私立探偵。元公安部長)
・小島節子(小島敬典の後妻で、旧姓・中村。金沢が生まれ故郷。小島敬典の20歳年下)
・都内の「天野書店」主人(神田神保町の古書店)
・有名なIT企業の若手経営者(大河原とライバルの二世政治家の熱烈な支援者)
・石川県立N高校の教頭(小島節子の卒業した金沢市内の高校)
・今村今日子(小島節子と高校時代の同級生で37歳の専業主婦。サラリーマンと結婚し10歳の娘と金沢市のマンション暮らし)
・沢田みゆき(小島節子と高校時代の同級生。3年前に離婚し地元の観光会社で勤務)
・浜口(中央新聞社会部デスク)
・中尾かおる(大河原大臣の秘書で30代の女性)
・深見(中央新聞の若い記者)
・黒部警察署長
・欅平駅周辺の旅館の女将
・富山地方鉄道の観光列車の女性アテンダント
・宇奈月温泉の旅館の女将
・黒部峡谷鉄道の欅平の駅員
・富山地方鉄道の電鉄富山駅の駅員
・三田村刑事(警視庁捜査一課の「十津川班」刑事)
・北条早苗刑事(警視庁捜査一課の「十津川班」刑事)
。片桐刑事(警視庁捜査一課の「十津川班」刑事)












