南越地域の寺社「大塩八幡宮」(福井県越前市国兼町22-2)

(写真下:「大塩八幡宮」(福井県越前市国兼町)<*2024年8月11日午後訪問撮影>

(写真下:「大塩八幡宮」二の鳥居(福井県越前市国兼町)<*2024年8月11日午後訪問撮影>

源平合戦の際、寿永2年(1183年)5月、木曽義仲が平家を追って、境内に本陣を置き、必勝を祈願したと伝わることで知られる大塩八幡宮は、その幣殿の後ろに「木曽義仲本陣跡伝承の地」の碑が建ち、「木曽義仲公ゆかりの社」の石碑が二の鳥居の脇に建っている。大塩八幡宮の由緒自体は、仁和3年(887)、紀中納言友仲が無実の罪で越前国府に流罪となった際、無実の罪を晴らし京へ戻れることを、この地で日夜祈願したところ、念願成就し、2年後の889年(寛平元年)に朝廷に復帰することができ、この話をうけた宇多天皇の仰せにより、京都岩清水八幡宮の分霊を勧進し大塩八幡宮が建立されたと伝えられている。越前国府を守るために北向きに建てられた全国でも珍しい神社。

拝殿は、これほどの舞台を備えた大型拝殿は日本には2~3か所しかないといわれ、国重要文化財に指定されている。拝殿は室町時代の建造物と推定される。社殿によれば木曽義仲が平家を追ってこの社に陣を張った折、兵火により焼失したのを誠に申し訳ないと、南越前町にあった日吉山王社の拝殿を三日三晩で移築したと伝えられている。拝殿の向かって左には、南北朝時代に鋳造された福井県指定文化財の梵鐘があり、元は滋賀県にあったものを、慶長20年(1615年)越前府中城主本多富正によって大塩八幡宮に寄進されたもの。境内には6つの境内神社があり、なかでも疱瘡の神様の寿翁神社(疱瘡神社)が有名。朝倉孝景公の息女、庖瘡に悩されたのをこの社の守札により、無事全快したと伝えられる。

大塩八幡宮は、鎌倉幕府からは朔幣田、足利幕府の杜殿修復、朝倉家の社殿並びに大鳥居の寄進等、領主、国司の崇敬厚く荘厳を極めたが、天正年間一揆の際、社殿の一部破壊、神領の没収など、衰退に傾くも、慶長8年(1603年)、福井藩祖の松平秀康により社領30石、元和9年(1623年)には福井藩主の松平忠直により20石加増以来、順次造営補修が続けられて、また江戸時代を通じて松平家(福井藩)本多家(府中藩)代々から崇敬された。

御祭神
帯中津日子天皇(たらしなかつひこのすめらみこと)(第14代仲哀天皇)
品陀和気天皇(ほむだわけのすめらみこと)(第15代応神天皇)
息長帯日賣尊(おきながたらしひめのみこと)(神功皇后)仲哀天皇の皇后
御由緒  <*大塩八幡宮のしおり>
第58代光孝天皇の御代、平安初期にあたる仁和3年(887年)8月3日、朝廷にあった紀中納言友仲朝臣(後(きのはせお)と云い菅原道真公の門弟、文章博士、遣唐使副使となる)21歳(一説には43歳)にして仲間のねたみにより、越前国府中の南(日野川の中州? <*石碑には、大谷口泉嶋と明記>)へ流罪となった。そこで無実の罪を晴らさんとして、この社を祈願の地と定めて榊を桜井峯(背後の峯)に植え、麓に参籠所を設けて、石清水八幡宮(都の守護神)の神明の加護を願い日夜、帰洛のことを祈る内に間もなく祈祷の甲斐あって、神勅を蒙り程なく許されたのである。
時に宇多天皇の寛平元年(889年)3月、無事朝廷に復帰することが出来たのを喜んで、早速神勅の趣を密奏するに、天皇の御霊夢に不思議やびたりと符合されたことをことの外驚かれ、この不思議な霊験により、早速現在地に紀友仲朝臣に当宮建立の棟梁を仰せ給い、朝廷より木工寮、内匠寮に仰せて造営費と技術、資材の援助により造営されたのである。寛平3年(891年)8月20日、京都石清水八幡宮を勧請して、勅使三条大納言公季卿下向し、神主清原真人元政(瓜生神主の祖)他禰宜、社人同行した。同5年8月15日を例祭日と定め神事方生会等石清水祭祀の如く行われたという。神領は従都部郷(しとべごう、南条郡内)封戸3百戸、約5千石を賜わった。当国は日本海を距てて異国に近く、北夷降伏と越前国府(武生)鎮護の為、社殿をあえて北面鎮座したという。
無実の罪や疑いを受けたものは、この御祭神に祈れば速かに災難をのがるる霊験があります。その後、鎌倉幕府の朔幣田、足利幕府の杜殿修復、朝倉家の社殿並びに大鳥居の寄進等、領主、国司の崇敬厚く荘厳を極めたが、天正年間一揆の際、社殿の一部破壊、神領の没収があったが、慶長8年、松平秀康公社領30石、元和9年同忠直公20石加増以来順次造営補修が続けられて、松平家(福井藩)本多家(府中藩)代々の崇敬、誠に厚いものがあり今日に及ぶ。明治4年10月郷社、同7年6月旧県社となる。

(写真上:「木曽義仲公ゆかりの社」石碑)<*2024年8月11日午後訪問撮影>
(写真下:二之鳥居脇の駐車場にある「大塩山城の歴史」案内板)<*2024年8月11日午後訪問撮影>

大塩山城の歴史
この山は、旧桜井の峯と称し、山城が設けられる以前の昔、奈良時代、このところに延喜式内社という『天八百萬比
咩(アメノヤオヨロズヒメ)神社』が祀られていました。鎌倉時代の文暦2年(1235年)3月、現在の八幡宮境内に遷座されるまで、この山頂にあったと伝えています。源平時代の寿永2年(1183年)6月、今の長野県木曽谷出身の木曽義仲が軍勢を率いて、この山城を築き、この山一帯に軍勢を配置したと云われています。木曽義仲軍の滞在は短い期間ではありましたが、旧武生市内の府中城からこの附近にかけて、その人数3万から5万と伝えています。現在は本丸跡などの土塁や砦構等、堀切(空掘)の跡などが残っています。其後、南北朝時代の延元元年(1336年)12月、杣山城にあった瓜生保の武将、瓜生照一族が、この大塩山城に陣を構え、日野川の各所で戦い、見事勝利してこの山城を守ったと伝えています。 以上
平成24年(2012年)10月 大塩谷「巴会」 王子保地区自治振興会

(写真下:大塩八幡宮の三之鳥居と、奥は荒垣門)<*2024年8月11日午後訪問撮影>

(写真下:大塩八幡宮の拝殿<*2024年8月11日午後訪問撮影>

大塩八幡宮拝殿
重要文化財 昭和53年(1978年)11月1日指定
この拝殿は、室町時代の建立と考えられ、正面七間、側面四間の入母屋造柿葺の建物である。簡素な中に落着きのある大型の長床式拝殿の例として貴重なものである。昭和53年(1978年)に重要文化財に指定され、翌年より2年をかけて解体修理が行なわれ、建立当初の姿に復元された。その後、平成14年(2002年)から15(2003年)にかけて、屋根の全面葺替えを行なった。  越前市教育委員会

(写真下:大塩八幡宮の二之鳥居近くの拝殿についての案内板<*2024年8月11日午後訪問撮影>

大塩八幡宮拝殿
重要文化財 昭和53年(1978年)5月31日指定
大塩八幡宮は、社記によれば寛平3年(891)の鎮座と伝えられる古社で、武家を中心として崇敬を集め、斯波、朝倉、松平氏等の代々の国主により社殿の修復がなされてきており、その棟札も残されている。拝殿は、室町時代の建立と考えられる大型のもので、昭和53年(1978)に国の重要文化財に指定され、翌年より2年をかけ解体修理が行われて当初の姿に復元された。この建物は入母屋造柿葺で、五間 X 二間の身舎の四周に一間の庇を設けた構成となっており、縁は持たない。全体に古式で柱は太く、木割も比較的大きな落ち着きのある長床式拝殿の例として貴重なものである。 越前市教育委員会

(写真下:大塩八幡宮の梵鐘<*2024年8月11日午後訪問撮影>

梵鐘
市指定文化財 昭和44年(1969年)11月1日指定
この梵鐘は、仁安2年(1167)江州(滋賀県)ではじめて鋳造されたが、その後破損したため、元弘2年(1332)に、現在のものに鋳直された。さらに慶長20年(1615)には府中領主本多富正によって当神社の神鐘として奉納されたものである。鎌倉時代の梵鐘として当市唯一の貴重な文化財である。 越前市教育委員会
<*平成27年(2015)3月、県文化財に昇格指定>

(写真下:大塩八幡宮の幣殿<*2024年8月11日午後訪問撮影>

(写真下:境内神社の寿翁神社(疱瘡神社)<*2024年8月11日午後訪問撮影>

(写真下:境内神社の延喜式内・準別宮 天国津彦神社・天国津比咩神社<*2024年8月11日午後訪問撮影>

(写真下:境内神社の延喜式内・別宮 高岡神社<*2024年8月11日午後訪問撮影>

 

 

 

 

 

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