北陸の歴史人物関連 「浅野総一郎翁誕生地碑」(1848年~1930年)(富山県氷見市薮田)

北陸の歴史人物関連 「浅野総一郎翁誕生地碑」(1848年~1930年)(富山県氷見市薮田)

<写真下:「浅野総一郎翁誕生地碑」(富山県氷見市薮田)(*2025年5月16日午後訪問撮影)

<写真下:「セメント王 浅野総一郎翁小伝」説明碑(富山県氷見市薮田)(*2025年5月16日午後訪問撮影)

セメント王 浅野総一郎翁小伝
明治大正昭和にわたりわが国実業界の巨人であった浅野総一郎翁は嘉永元年3月10日富山県氷見郡薮田村医師浅野泰順の長男としてこの地に生れた。年少にして実業に志し明治4年大志を抱いて上京し薪炭コークス等の商業に従事して功を納めた。燃料の納入で関係のあった東京深川清澄町所在の官営セメント工場が経営に行き詰まるや明治16年これを借り受け次いで払下げを受けて経営に当たった。これが現在の日本セメント株式会社の前身浅野セメントである。以来 翁はセメント事業を主柱として海運炭鉱埋立水力電気製鉄造船貿易等の事業を興しわが国産業界に多大の貢献をなし昭和5年11月9日 83歳をもって長逝した。一生を通し「努力と度胸かせぐに追いつく貧乏なし」の信条を掲げて国家社会のために活躍し事業の権化と仰がれた。生誕125年に当たり この地に誕生碑を建て翁の鴻業を顕彰する。
昭和48年3月10日 日本セメント株式会社 取締役社長 武安千春

浅野総一郎(嘉永元年(1848)~昭和5年(1930))は、越中国射水郡藪田村(現・富山県氷見市薮田)で、医師淺野泰順の長男として生まれる(幼名は泰治郎)。16歳年上の姉・お富に婿を迎え跡継ぎにすることが浅野総一郎が生まれる前から決まっていて、1853年(嘉永6年)、6歳で母リセの妹で叔母のトヨの家の氷見の町医者・宮崎南禎に養子に出されたものの15歳のときに離縁。実家に戻り、その後、慶応2年(1866)、射水郡大野村の豪農の庄屋・鎌仲惣右衛門の一人娘ヤスの婿養子となり、産物会社など、いくつもの事業を始めるも、いずれの事業も失敗し鎌仲家と離縁。一旦は実家に再び戻るが、多くの借金を抱え、1871年(明治4年)、23歳のときに逃げるようにして上京。東京では砂糖冷水売りから始め、竹皮商、薪炭商、石炭商等を経て、横浜瓦斯局が廃棄するコークス、コールタールの払下げを受け、コークスは燃料として、またコールタールはコレラの流行で不足していた消毒用の石灰酸として売り込むことに成功。また、石炭取引先の抄紙会社の渋沢栄一の知遇を得、その助力により、1883(明治16)年、官営の深川セメント工場を借り受け(翌年払下げ)、浅野工場(浅野セメントの前身)を設立。渋沢や同じ越中出身の安田善次郎などの協力を得て、経営は順調に進み、良質なセメントを大量に生産。

総一郎は、この他、主要事業として磐城炭坑(1883(明治16)年創立)と東洋汽船(1896(明治29)年創立)も経営するとともに、様々な事業の設立に出資し、役員として経営に関与。その中で、最も力を入れた事業が東京湾の埋立事業で、埋立地に臨海の工業地帯を造成して、大型船が横付けできる港を造り、また鉄道ともつなぐ大規模事業を強力に推進。ここでも渋沢や安田の協力を得、1912(明治45)年、鶴見川崎地先に150万坪の埋立計画の認可を神奈川県に出願し、15年かけて完成させ、これにより京浜工業地帯の礎を築く。一代で浅野財閥を築いた明治・大正時代を代表する日本の大実業家となり、「京浜工業地帯を創った男」、「日本のセメント王」などと呼ばれる。享年83歳。

浅野総一郎生誕125年にあたり、浅野総一郎生誕の地の薮田(富山県氷見市薮田)の薮田コミュニティセンター横の薮田児童公園の隅に、昭和48年(1973年)3月10日に、日本セメント株式会社により「浅野総一郎翁誕生地碑」が「セメント王 浅野総一郎翁小伝」の碑とともに建立された。1883(明治16)年、浅野総一郎は、渋沢栄一らの助力により、工部省深川工作分局を借り受け、翌年、同工場の払い下げを受け、匿名組合浅野工場を設立。1898(明治31)年、浅野セメント合資会社に改組。1912(大正元)年、浅野セメント株式会社を設立し、翌年に浅野セメント合資会社を合併。1947(昭和22)年、戦後の財閥解体に伴い、日本セメント株式会社に商号変更。浅野セメントの初代社長は、浅野総一郎(初代社長在任1912~1930)で、1947年の日本セメント時代から3人目の社長が、「浅野総一郎翁誕生地碑」建立の日本セメント株式会社社長の武安千春氏(社長在任:1966年~1974年)。尚、日本セメント株式会社は1998(平成10)年、秩父小野田株式会社と合併し、太平洋セメント株式会社となる。

<写真下:「浅野総一郎翁誕生地碑」案内板(富山県氷見市薮田)(*2025年5月16日午後訪問撮影)
*太平洋セメント株式会社による案内板

⇒同じ敷地内に平成20年(2008年)7月20日に建立された「九転十起の像(浅野総一郎翁像)
<写真下:「九転十起の像」(富山県氷見市薮田)(*2025年5月16日午後訪問撮影)


<写真下:「九転十起の像」浅野総一郎年譜(富山県氷見市薮田)(*2025年5月16日訪問撮影)

浅野総一郎年譜
・嘉永元年(1848)3月10日:
富山県氷見郡薮田村に医師・浅野泰順の長男として生まれる。幼名泰治郎。後に総一郎と改名。
・嘉永6年(1853)(6歳)

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