首都圏の中の北陸ゆかりの地「杉田玄白生誕地と小浜藩邸跡の碑」<新宿区立矢来公園内>(東京都新宿区矢来町38)

首都圏の中の北陸ゆかりの地
「杉田玄白生誕地と小浜藩邸跡の碑」<新宿区立矢来公園内>(東京都新宿区矢来町38)

(写真上:杉田玄白生誕地の碑(新宿区立矢来公園内、東京都新宿区矢来町38)<*2023年10月13日午後訪問撮影>
(写真上:小浜藩邸跡の碑(新宿区立矢来公園内、東京都新宿区矢来町38)<*2023年10月13日午後訪問撮影>
(写真上:碑の正面が「小浜藩邸跡」、碑の左側面が「杉田玄白生誕地」と刻まれている(新宿区立矢来公園内、東京都新宿区矢来町38)<*2023年10月13日午後訪問撮影>

(写真上:小浜藩邸跡と刻まれた碑の面の地表にある説明石より新宿区立矢来公園内、東京都新宿区矢来町38)<*2023年10月13日午後訪問撮影>

小浜藩邸跡 
若狭国(福井県)小浜藩主の酒井忠勝が、寛永5年(1628)徳川家光からこの地を拝領して下屋敷としたもので、屋敷の周囲に竹矢来をめぐらせたことから、矢来町の名が付けられました。
もと屋敷内には、小堀遠州作になる庭園があり、蘭学者として著名な杉田玄白先生もこの屋敷内で生まれました。

杉田玄白 1733年10月20日(享保18年9月13日) – 1817年6月1日(文化14年4月17日)
江戸中期の蘭方医、蘭学の祖。
小浜藩の家臣で外科医杉田甫仙の三男として、享保18年(1733年)、江戸牛込の小浜藩藩主酒井家の下屋敷(現在の新宿区矢来町)に生れ、元文5年 (1740年)父に従い一家で小浜へ移り、延享2年 (1745年)父が江戸詰めを命じられ、再び矢来屋敷に戻る。諱は翼(たすく)、字は子鳳(しほう)、号は鷧斎(いさい)。
寛延2年(1749)幕府に仕える外科医西玄哲にオランダ流の外科を学び、宝暦3年(1753)小浜藩医として召し抱えられる。宝暦4年(1754)医学者・山脇東洋による京都での国内初となる人体の解剖を知らされる。宝暦7年(1757)小浜藩に籍を置きながら日本橋に町医者として開業。明和6年(1769)藩主 酒井忠貫の参勤交代に従い小浜へ行き、また、父 甫仙死去に伴い、家督30人扶持を相続し、小浜藩侍医(藩主の主治医)となる。
明和8年(1771)中川淳庵の仲介でオランダ語の解剖書「ターヘル・アナトミア」を入手(小浜藩が購入し研究書として与える)。前野良沢、中川淳庵とともに、江戸小塚原(こづかっぱら)の刑場で行われた刑死体の解剖に立ち会ったとき、持参していたオランダの医学書「ターヘル・アナトミア」の解剖図の正確さに驚き、翻訳を決意し、腑分けをみた翌日から前野良沢の家に集まって「ターヘル・アナトミア」の翻訳を始め、安永2年(1773)「ターヘル・アナトミア」の翻訳をほぼ完成し、その予告版である「解体約図」を出版。安永3年(1774)「解体新書」を完成させ「解体新書」全5巻を出版。
安永7年(1778)大槻玄沢が玄白の私塾 天真楼に入門。天明5年(1785)藩主 酒井忠貫の参勤交代に従い小浜へ行く。寛政7年(1795)建部清庵との手紙のやりとりをまとめた「和蘭医事問答」を出版。文化7年(1810)「形影夜話」を出版。文化12年(1815)回顧録「蘭学事始」が完成。「蘭学事始」は、杉田玄白死後50年以上経った明治2年(1869)福沢諭吉が出版。
文化14年(1817)江戸の自宅で死去。

江戸の小浜藩邸(矢来屋敷)
1634年(寛永11年)に若狭国小浜藩の初代藩主となる酒井忠勝(1587~1662)が、川越藩主であった時、1623(元和9年)京都屋敷の拝領に次いで、1628(寛永5年)3月、現在の新宿区矢来町一帯に4万坪以上の広さの土地を拝領して、酒井家の下屋敷とする。矢来屋敷の庭園は名園として知られ、3代将軍・徳川家光は1637年(寛永14年)3月21日に牛込別邸に初めて将軍御成。以降、計100回以上、この屋敷を訪れている。4代将軍家綱も、1656年(明暦2年)5月26日、4代将軍となってから初めての牛込御成を果たしている。尚、この一帯が矢来町と呼ばれる所以は、この下屋敷が竹矢来で囲まれていたからだという。竹矢来は、御家人衆が抜き身の槍を持って、この屋敷に避難してきた将軍を警固した政事にちなんだものといわれ、1639年(寛永16年)8月11日の江戸城本丸火災の時とも、明暦の大火の際ともいうが、史料的裏付けはとれない。

(写真上:昭和44年(1969)11月1日開園の新宿区立矢来公園(東京都新宿区矢来町38)<*2023年10月13日午後訪問撮影>
(写真上:新宿区立矢来公園内の一本桜(東京都新宿区矢来町38)<*2023年10月13日午後訪問撮影>

江戸の小浜藩邸跡と杉田玄白生誕地碑
東京都新宿区では、”新宿区は福井県小浜市から「杉田玄白生誕地顕彰碑」「小浜藩下屋敷説明碑」の寄贈を受け、平成16年(2004)9月に矢来公園内に設置”と、区の広報でも紹介しているが、元 福井県立若狭歴史民俗資料館館長の中島辰男氏(福井県小浜市)が尽力し関係者の了承を取得し個人の寄贈で碑の建立が実現していて、この碑が新宿区立矢来公園内に設置された経緯については、22ページの小冊子『江戸の小浜藩邸跡と杉田玄白生誕地碑』(非売品、中島辰男 著、出版者:中島辰男、2005年7月)に記録されている。
これによると、福井県立若狭歴史民俗資料館館長在任時の2004年3月10日に、中島辰男氏が碑の建立について関係筋へのお願いも兼ねて福井県小浜市より上京(中島辰男氏は2004年3月31日に福井県立若狭歴史民俗資料館館長退任)。酒井家19代当主酒井忠和氏から、東京の矢来町に江戸小浜藩邸跡の碑を建立することへの了解を得た後、新宿区立新宿歴史博物館を訪ね、新宿区教育委員会への取次を依頼。翌3月11日には矢来町を初めて訪ね碑の設置場所候補として矢来公園も訪ねる。
碑については、中島辰男氏個人から小浜市に寄贈し、小浜市から新宿区に寄付採納という形とすることになり、2004年6月14日付で中島辰男氏から小浜市に寄付申請。小浜市長の許可取得後、同年7月5日付で小浜市長より新宿区教育委員会宛て寄付採納の申請書提出。同年7月21日付で小浜市に寄付採納受理許可となり、同年9月初、新宿区立矢来公園の一角に碑の建立完了。当時の西川福井県知事の意向で、新宿区長と矢来公園でお披露目式を行うことになり、2004年12月20日に開催。西川一誠福井県知事、中山弘子新宿区長はじめ、酒井家御当主・酒井忠和氏、杉田玄白の子孫・杉田秀男氏以下、新宿区教育委員会、福井県人会長、小浜市教育長、福井県東京事務所長、矢来町矢来南町会正副会長等の関係者参列。

碑は御影石の石柱で、碑の正面には「小浜藩邸跡」、左側面には「杉田玄白生誕地」、裏面には、「2004年8月 設置者 福井県 小浜市 寄付者 小浜市 中島辰男」 と刻まれている。新宿区立矢来公園内に寄付採納、設置されたのは、石柱の碑と、「小浜藩邸跡」の石の説明盤。(設置場所については矢来町の秋葉神社の境内とか、碑についても御影石でなく福井県産材とかいう意見もあったらしい)

■『江戸の小浜藩邸跡と杉田玄白生誕地碑』目次:(1)はじめに (2)大名屋敷とは (3)江戸の小浜藩邸 (4)新宿区の大名屋敷 (5)杉田玄白と公立小浜病院長 (6)碑の建立と公費 (7)新宿歴史博物館 (8)初めて矢来町へ (9)新宿区教育委員会へのお願い (10)小浜藩邸跡と杉田玄白生誕地碑なる (11)晴れて碑のお披露目式 (12)おわりに

(写真上:新宿区立矢来公園外の「鏑木清方旧居跡」案内板(東京都新宿区矢来町38)<*2023年10月13日午後訪問撮影>   *明治生まれの日本画家・鏑木清方の旧居跡で、江戸の小浜藩邸とは関係無いが、同じ場所で、こちらは新宿区指定史跡。

新宿区指定 史跡 鏑木清方(かぶらき きよかた)旧居跡
所在地 新宿区矢来町38番地3
指定年月日  令和元年(1989)6月3日
日本画家・鏑木清方(1878~1972)は、大正15年(1926)9月から昭和19年(1944)まで、現在の新宿区矢来町38番地3に暮らした。ここ新宿区立矢来公園の東に隣接する一帯である。
清方は、本名を健一といい、明治11年(1878)に、東京神田に生まれた。13歳の時に、浮世絵の流れを汲む水野年方(みずのとしかた)へ弟子入りし、美人画を得意とする画家として地位を固めていった。矢来町の家は、大正15年(1926)9月より賃借し、のちに購入して、懇意の建築家・吉田五十八(よしだいそや)へ依頼し、応接間や玄関を改築して制作環境を整えた。清方はこの家を「夜蕾邸(やらいてい)」と称した。代表作となる「築地明石町」(昭和2年)のほか、「三遊亭圓朝像」(昭和5年、重要文化財)など絵画史に名を残す名作をこの地で多く制作した。なお、鎌倉に転居後の昭和29年(1954)には文化勲章を受章した。

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