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北陸を舞台とする小説 第17回 「東尋坊伝説殺人事件」(川崎 貴人 著)
- 2025/1/25
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北陸を舞台とする小説 第17回 「東尋坊伝説殺人事件」(川崎 貴人 著)
「東尋坊伝説殺人事件」(川崎 貴人 著、JOY NOVELS <有楽出版社発行・実業之日本社発売、2006年1月発行)
<著者略歴>川崎 貴人(かわさき たかひと)(本書掲載著者紹介より・本書発行当時)
1946年、山口県生まれ。駒澤大学時代には詩や小説の同人誌を渡り歩き、自身でも主宰して、発行する。卒業後、出版社に勤務。退職後は、フリーのルポライターとして週刊誌や雑誌に取材記事を発表。とくに、トラベルと風俗関係のルポには定評がある。蓄積された観光地取材を元に、このたび思いを新たにして、トラベルミステリーに挑戦する。
出版社勤務退職後、フリーのルポライターとして週刊誌や雑誌に取材記事を発表していた著者が、蓄積された観光地取材を元に、思いを新たにして、トラベルミステリーに挑戦。60歳にして2006年1月に有楽出版社(発売:実業之日本社)より初刊行されたトラベルミステリーが本書』で、タイトル通り、福井県坂井市三国町の東尋坊にまつわる伝説に絡め、福井県北部の越前を舞台とした書き下ろし旅情ミステリー。この2006年には、本書に続き、『古都山口・桜山の殺人:書き下ろし旅情ミステリー』(2006年6月発行)、『古都萩・指月城址の殺人:書き下ろし旅情ミステリー』(2006年10月発行)と、有楽出版社発行、実業之日本社発売で3冊旅情ミステリーを刊行。更に翌2007年5月には、「鳴子伝説殺人風景:白鳥夕子の事件ファイル:長編旅情ミステリー 」(光文社発行)を刊行。本書のプロローグでは、いろんな伝説がある中で広く流布している平泉寺の悪僧の東尋坊にまつわる伝説を書き起こしている。
本書のストーリーは、6月1日早朝、3日前から雨が降り続き、東京都西多摩郡奥多摩町鳩ノ巣の多摩川渓谷の崖崩れの土砂の中からから、腐乱した女性の遺体が発見されることから始まる。鑑識の結果、1年ぐらい前に殺害をされて、遺体は崖の中腹に埋められていたことはわかるも、犯罪の痕跡も何も残らず、また遺体は岩石の落下で押し潰され、身許の特定も難しいように見えたが、被害者の似顔絵が公開されると、東京・池袋のスナック「白と黒」ホステスの風見良恵より、前年8月より行方不明だった同僚ホステスの桂木佳代子ではないかとの情報が寄せられ、被害者の身許は判明する。
一方、同じ頃の6月3日、東京・三軒茶屋に事務所を構える連城路探偵事務所へ、行方不明になった血のつながっていない妹・星川美奈を探してくれという東京・狛江市在住の依頼人・栗原彩子が現れる。星川美奈も出身地の岩手県を出て、上京し就職。以前は、新宿にある赤沼建設の本社の受付係として勤めていたが、4月10日に会社を突然辞め、住んでいた三軒茶屋の太子堂のアパート近くの喫茶店でアルバイトとして働いていた。星川美奈と連絡がつかなくなり、勤務先の喫茶店に電話したら、3日前の5月31日に突然辞めたと聞き、勤務先の喫茶店近くに探偵事務所を見つけ相談してきたというもの。
探偵事務所所長の連城路公彦は、依頼人の栗原彩子とともに星川美奈の三軒茶屋の太子堂のアパートで、購読していた毎朝新聞の5月30日付の東京版のページの右端がちぎり取られていたことを発見。また、そこで、赤沼建設勤務時代の社員旅行の時の写真を見せてもらうが、前年11月10日、福井県芦原温泉・涼風閣での宴会時の社員の集合写真や、東尋坊で同僚の女性写真と写る写真。他には東尋坊タワーや、翌11月11日付の丸岡城や永平寺などの写真も含まれていた。
気になるちぎり取られていた新聞記事の内容は、5月29日午前、東京・杉並区成田東のマンションの一室で女性が殺害されているのが発見されたという記事で、殺害された女性は、24歳の建設会社OLの江上亮子。星川美奈の突然の行方不明の原因は、この記事の内容に関連がある可能性が大きく、探偵の連城路公彦の調査は、江上亮子と星川美奈が勤めていた東京・西新宿の赤沼建設に向かう。そして、赤沼建設の2人の同僚だった受付嬢から、星川美奈が4月10日の突然の退職直前の4月5日に、総務部長から突然、福井県の芦原温泉に出張を命ぜられ、芦原温泉から帰京して様子が変になったことが分かる。
また、6月4日朝には「国会議員橋爪氏に政治資金規正法違反?」という新聞記事が報道されるが、これは福井県選出のあわら市出身の与党・民自党の5期目の国会議員・橋爪謙吾が、地元芦原温泉のホテルの別館建設に関して、東京新宿に本社がある赤沼建設の福井営業所に便宜を図り、3千万から5千万円の政治献金を、記載、届け出がなく受けているという裏金疑惑の容疑についての報道。行方不明の調査を受けた探偵の連城路公彦は、調査を進めていくうちに、星川美奈が福井県あわら温泉に向かったのではないかと考え、福井県芦原温泉へ向かうことに。こうしてストーリーの舞台は、福井県あわら温泉を中心に展開していく。そして、奥多摩の鳩ノ巣渓谷で発見された腐乱女性死体事件と、連城路探偵事務所が請け負った星川美奈の行方不明事件の調査とは、はじめは全く無関係な二つの事件に思われたが、事件の解明が進んでいくうちに、意外な結びつきがあることが判明していく。
最初の事件の発端は、奥多摩の鳩ノ巣渓谷での死体発見や、三軒茶屋の探偵事務所に三軒茶屋に住んでいた20歳の女性の行方不明捜索など、ストーリーの序盤は、東京各地で展開するが、事件の解明が進みだすと、福井県あわら市出身の国会議員のあわら温泉別館建設に絡む話が核となり、いくつかの事件の解明の舞台は福井県に移っていく。本書のタイトルは、東尋坊とはなっているが、まずは、福井県あわら市のあわら温泉街が主舞台の一つ。登場人物の1人のあわら市出身の国会議員のあわら市での自宅は、1994年(平成6年)に芦原温泉開湯110年を記念して温泉街中心部に建てられた公衆大浴場のセントピアあわらのすぐ近くという設定で、また、事件を追って、東京の探偵事務所の連城路公彦が芦原温泉に滞在し、あわら温泉街を調べ歩き、あわら温泉街在住のいろんな人達との関わりが生まれてくる。
そして、東京の探偵事務所の連城路公彦が芦原温泉に滞在しながら、事件の調査を進めるなかで、丸岡城のある丸岡町や、永平寺のある永平寺町の門前通りにも出かけているが、あくまで丸岡城や永平寺が登場シーンとはならないが、丸岡や永平寺の町の説明の中で丸岡城や永平寺の紹介もされていて旅情を掻き立てられる。気になる本書タイトルの東尋坊だが、これは、あわら温泉のホテルの別館の建設地が、三国町の東尋坊の近くの海浜自然公園の手前に予定されていたという設定で、三国町の東尋坊とその付近がストーリーに登場してくる。この海浜自然公園は、日本海に面した総面積約23㎡の広大な坂井市海浜自然公園(福井県坂井市三国町安島)。それでも、まだ本書タイトルが、あえて、「東尋坊伝説殺人事件」という、”東尋坊伝説”と付けた著者の意図がどこにあるのか、ずっと気になっていたが、その疑問は、本書終盤で解決できるようになっている。
尚、本書のストーリー展開時期については、ある年の6月の7日間で展開する話となっていて、年代については明記はないものの、えちぜん鉄道あわら湯のまち駅が出てくることから、2004年以降の話と分かる。かつて京福電鉄が福井県下で運営していた鉄道事業を、第3セクター方式で2002年9月に設立されたえちぜん鉄道が受け継ぎ、2003年2月開業、営業開始は2003年7月で、えちぜん鉄道あわら湯のまち駅も2003年7月に名称変更(以前は京福電鉄芦原湯町駅)。また、福井県あわら市が登場するが、あわら市自体は、2004年3月に坂井郡芦原町と坂井郡金津町が合併して発足で、本書のストーリー展開時期も2004年以降の6月と分かる。本書で登場する三国町や丸岡町は、本書発行(2006年1月)以降の2006年(平成18年)3月20日に、旧坂井郡の三国町・丸岡町・坂井町・春江町が合併し、坂井市が新設発足。本書ストーリーで奥多摩の事件が起こったのは、6月1日の土曜日となっているが、2004年6月1日は火曜、2005年6月1日は水曜で、その周辺で6月1日は土曜だったのは2002年。
目次
プロローグ
第1章 渓谷の惨劇
第2章 灰色の霧
第3章 闇の女
第4章 影の閃光
第5章 古里傷痕歌
第6章 地鎮と祈祷
第7章 殺人回路
第8章 殺意の結び目
第9章 気泡の波
エピローグ
<主なストーリー展開時代>
・6月1日~6月7日の1週間(年代は明記はないものの、2005年と推定)
<主なストーリー展開場所>
・福井県(芦原温泉郷、三国町<海浜自然公園・東尋坊>、永平寺町、丸岡町)
・東京多摩地区(奥多摩町鳩ノ巣、青梅)
・東京区部(三軒茶屋・太子堂、杉並区成田東、渋谷、西新宿、南青山、池袋、椎名町、石神井、羽田)
<主な登場人物>
・連城路公彦(35歳独身で東京・三軒茶屋の探偵事務所所長)
・中林武志(連城路探偵事務所所員。39歳で元探偵事務所経営)
・竹内由佳(26歳の連城路探偵事務所事務員。元法律事務所勤務)
・連城路和彦(連城路公彦の4歳年上の兄で、弁護士としての独立を目指して法律事務所に勤務)
・栗原彩子(岩手県出身で高校を出ると上京し、四菱デパートに勤務の25歳の女性。狛江市在住)
・星川美奈(栗原彩子の血のつながらない妹で20歳。三軒茶屋の太子堂に一人暮らし)
・江上亮子(新宿の赤沼建設社員で受付担当から秘書課に配属。杉並区成田東のマンション在住で24歳)
・橋爪謙吾(福井県選出の5期目の与党・民自党国会議員で55歳)
・笹塚丈一(橋爪謙吾の秘書で49歳。前田次郎の従兄弟)
・妖気院千寿(東京・南青山に事務所と自宅を持つ祈祷師。永平寺近くの石材店の出身)
・小倉昭三(青梅西警察署の捜査一課課長で40歳の警部)
・山崎和夫(青梅西警察署の捜査一課警察官で27歳の巡査部長)
・佐々木信男(親の代からの東京と西多摩郡奥多摩町鳩ノ巣に住み、土産物店を経営)
・桂子(佐々木信男の妻)
・氷川(鳩ノ巣駐在所勤務の警察官)
・川島健夫(警視庁の捜査一課の課長補佐)
・牧田(青梅西警察署署長)
・安田(科学捜査研究所主任)
・木村(鑑識課課長代理)
・青梅西警察署の刑事総務部の女性職員
・小室(青梅西署の捜査一課)
・鈴木(鳩ノ巣谷の渓谷口から上流沿いにある民家の50代半ばの一人暮らしの主婦)
・池上博也(鈴木家の元隣近所の一人息子で28歳。高校卒業後、東京で就職後に暴力団の構成員)
・前田次郎(渋谷・道玄坂に本店がある日東不動産代表取締役社長で青海に梅里不動産という会社も経営)
・小牧洋子(渋谷の日東不動産の女性社員)
・木下(三軒茶屋の「みどり」という50歳代の喫茶店店主)
・毎朝新聞太子堂販売店の女性従業員
・江上亮子が住んでいた杉並区成田東のマンションの隣室に住む40代半ばの婦人
・小野紀子(西新宿の赤沼建設の受付嬢)
・東京・中野区の料亭の仲居
・石森雄一(毎朝新聞社が発行している週刊毎朝特報の30歳代後半の記者)
・風見良恵(東京・池袋のスナック「白と黒」ホステス)
・桂木佳代子(東京・池袋のスナック「白と黒」ホステスで沖縄出身)
・森末健夫(東京・池袋のスナック「白と黒」店長で40歳前後)
・藤本歯科医師(東京・池袋の藤本歯科医院)
・桂木佳代子が住んでいた東京・椎名町の大隈マンション管理人
・伊藤聡子(東京・池袋のスナック「白と黒」ホステスで東京・石神井在住)
・金城玉子(桂木佳代子の29歳の沖縄在住の姉)
・松林民子(新宿のブティック勤務の45歳女性で、前田次郎の前妻)
・田口(杉並区成田東署の捜査員)
・芦原北署の署長
・小林(毎朝新聞芦原支局の記者)
・あわら温泉の涼風閣の50年配の仲居
・あわら温泉の涼風閣の社長(橋爪謙吾後援会会長)
・あわら温泉の涼風閣の料理長
・あわら温泉街の土産物店の店員
・赤沼建設の福井営業所職員
・松村潤(あわら温泉のスナック潤のマスターで、松村旅館の経営者の弟)
・茜(あわら温泉のスナック「潤」ホステス)
・山本牙風(芦原真報社主幹の40年配の男)
・妖気院千寿の東京の事務所の女性秘書
・妖気院千寿の妹(永平寺町の木下石材店経営)
・永平寺町の山根石材店の70歳前後の主婦
・石井医院(橋爪謙吾の後援会員が経営の丸岡町にある個人病院)
・道仲葉月(橋爪謙吾橋の東京事務所の世田谷区に住む女性職員)
・東京・目黒区にある人材派遣会社レディーワークスの女性社長
・須山博子(人材派遣会社レディーの女性社員で笹塚の27歳の愛人。青森市出身)
・三戸部(橋爪謙吾のあわら市の家の家政婦で芦原で生れ育つ。一人娘が京都の小料理屋に嫁ぐ)
・三国の海浜自然公園近くに住む50年配の婦人