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北陸を舞台とする小説 第34回 「十津川警部 小浜線に椿咲く頃、貴方は死んだ」(西村京太郎 著)
- 2026/8/25
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北陸を舞台とする小説 第34回 「十津川警部 小浜線に椿咲く頃、貴方は死んだ」(西村京太郎 著)

「十津川警部 小浜線に椿咲く頃、貴女は死んだ」(西村京太郎 著、集英社、2013年3月発行)
(*初出は「web集英社文庫」で2012年4月から10月まで配信された『小浜線に椿咲く頃、貴女は死んだ』で、初出を加筆訂正)

「十津川警部 小浜線に椿咲く頃、貴女は死んだ」(西村京太郎 著、集英社文庫<集英社>、2014年12月発行)<文庫本>
<著者紹介>西村京太郎(にしむら きょうたろう)(単行本掲載著者紹介より・発行当時)
1930年(昭和5年)東京生まれ。1963年『歪んだ朝』で「オール讀物」推理小説新人賞、1965年『天使の傷痕』で江戸川乱歩賞を受賞。1981年『終着駅殺人事件』で日本推理作家協会賞を受賞し、推理界に不動の地位を築く。2001年「西村京太郎記念館」オープン。2004年 日本ミステリー文学大賞を受賞。2012年刊行『十津川警部 秩父SL3月27日の証言』で出版点数500冊を突破。 <追記 *、2019年には「十津川警部」シリーズで吉川英治文庫賞を受賞。2022年3月逝去、享年91歳。1930年~2022年>
本書の著者・西村京太郎(1930~2022)氏は、鉄道や観光地を舞台にしたトラベルミステリーの第一人者で、十津川警部が活躍するシリーズなどの人気推理作家で多くの作品がテレビドラマ化されている。また多作で600以上の作品を世に送り出した。昭和5年(1930)東京生まれで、人事院に入ったが、作家を志して退職。トラック運転手や私立探偵などを経て30代の前期から作家活動に従事し、昭和38年(1963)「歪んだ朝」でオール読物推理小説新人賞を、昭和40年(1965)には、「天使の傷痕」で第11回江戸川乱歩賞を受賞。初期は社会派推理小説を執筆していたが、その後、トラベルミステリーの分野を開拓。昭和53年(1978)に発表した「寝台特急殺人事件」がベストセラーになって以来、十津川警部シリーズは数多くテレビドラマ化され、人気を集めた。晩年には、自伝的ノンフィクション「一五歳の戦争」を執筆するが、令和4年(2022)3月に逝去。本書は、多作で知られる西村京太郎氏のトラベルミステリーで人気シリーズの十津川警部シリーズの一作品ながら、十津川警部が活躍するという話ではなく、十津川警部の妻・直子が事件の当事者でもあり、危険な目にも遭いながらも推理に活躍する作品。本作品は、初出が「web集英社文庫」で2012年4月から10月まで配信された『小浜線に椿咲く頃、貴女は死んだ』。単行本は、初出を加筆訂正し、2013年3月に集英社より刊行。
本書のタイトルがユニークで、よくある○○殺人事件というようなものでなく、「小浜線に椿咲く 貴女は死んだ」というタイトルに、貴女は誰で、誰が「貴女は死んだ」と言っているのかが気になるし、「小浜線に椿咲く頃」というフレーズも、何を意味するのかがタイトルから気になる。本書のストーリーは、十津川警部の妻・直子に、京都K女子大学の5人の仲良しグループの同窓会の招待状が届くところから始まる。十津川警部の妻・直子は、直子は、東京の生まれだが、京都に憧れ、最初、東京の大学に入ったが、途中で退学し、改めて、京都のK女子大に入り直し、大学卒業後は京都から東京に生活の拠点を戻していた。十津川直子は、13年前となる京都K女子大学3年の時に、同窓生仲良し5人組のグループが出来、同窓会の差出人は、仲良しグループの世話役の花村亜紀。同窓生仲良し五人組の一人、金井富美が椿の花の絵で、日本画の権威ある賞「京都藤の花賞」をもらったということで、そのお祝いとともに、久しぶりに5人で京都で集まって、京都のホテルのフランス料理店で会食をして同窓会を楽しもうという招待。十津川直子以外の4人は金井富美、花村亜紀、後藤久美、三原敏子で、全員が京都在住。金井富美は、父親が日本画の画家で、京都K女子大を卒業した後、改めて京都の美術大学に入り日本画を勉強していた。昔から椿の花が好きで、仲間達から「椿の君」と呼ばれていた。花村亜紀は一番の世話好きで、昔からよく幹事役を引き受けていて、京都の新京極通りで夫と二人で骨董の店を出している。後藤久美は、5人の中では一番の美人で、卒業と同時に結婚。三原敏子は、独身で輸入販売会社を起業。
仲良し五人組の一人の三原敏子から、インドネシアに家具の輸入販売の仕入れで出張中から十津川直子に電話が入り、京都での同窓会の前日(5/24)早朝に成田に着くので、東京で会って、そのまま一緒に新幹線で京都に行かない?と誘いの連絡だった。その後、三原敏子から1日早く帰国したので、夕食を食べようと東京・新宿と思われる宿泊のホテルに誘われたが、三原敏子は、宿泊のホテルの部屋でナイフで刺殺されて殺害されているのが発見される。死体の第一発見者となったのは、約束に現れない三原敏子を心配して宿泊のホテルの部屋を訪ねた十津川直子だった。その後の警察の調べで、東京駅の中にある花屋に、若い女性が三原敏子の殺人事件の前日にやって来て、花束を注文し、これを東京のホテルに泊まっている三浦敏子に渡して欲しいと依頼があったことが判明する。白い椿の花を5本買い、それに自分の持ってきた赤い椿の花を一本、一緒にして届けて欲しいという奇妙な依頼で、花束につける札には、『6人目の比丘尼』と書いてあった。更に、三原敏子殺人事件の翌月には、京都・嵯峨野の池の真ん中あたりで、貸しボートの中で、仲良し五人組の1人の花村亜紀とその夫が青酸中毒で死んでいるのが見つかる。そして、花村亜紀の胸元には、赤い椿の花が留めてあった。
登場人物のほとんどが京都在住の人たちで、ストーリーも前半は京都で展開していき、事件の捜査にあたる十津川警部も、仲良し五人組の2人が殺害されたということで、残りのメンバーのことが心配になる十津川直子も京都で事件の真相を掴もうとする。そうした中、仲良し五人組の1人で、京都在住の西陣にアトリエを持つ日本画家の金井富美が、秋に個展をするために、福井県小浜市に家を借りて、日本画の権威ある賞「京都藤の花賞」の受賞作品と同じように、椿と八百比丘尼を題材とした百号の大きな絵を描き始めていた。十津川直子は、仲良し五人組のグループで残った2人と協力して犯人を見つけ出そうと、福井県小浜市にいる金井富美に会いに、京都市から小浜市に列車で向かった時に、小浜線の車中で何者かに襲われ後頭部を殴られてしまい、一時的な記憶喪失状態に陥ってしまう。十津川直子は、小浜方面行きの列車に乗っていたが、小浜駅に近くなった頃に、乗務していた車掌が、床に倒れていて動かず、後頭部から血を流している十津川直子を発見。小浜駅に救急車をよこし、小浜市内の病院に緊急搬送される。十津川警部は、京都府警が手配したパトカーに乗って亀井刑事と一緒に、京都市内から小浜市の海岸近くの海の見える高台にある病院に急行する。
本書の前半部で、ほぼ京都でストーリーが展開する中、会話の中では、福井県小浜市の八百比丘尼伝説ゆかりの八百姫神社が境内にある神明神社(福井県小浜市青井)の話題は度々登場していたが、金井富美が小浜市の神明神社の近くの二階建てのかなり大きな民家を借りて、日本画を描き始めたことで、十津川直子を始め、十津川警部たちも福井県小浜市を訪れることになり、福井県小浜市も本書ストーリーの重要な展開場所になっていく。更に、4人目の死者は、福井県の小浜の海の沖合で浮かんでいる死体を、小浜漁港の漁船が発見している。十津川直子を始め、京都K女子大学の同級生の5人の仲良しグループメンバーは、5人とも、比丘尼信仰に関心を持っていて、時々、福井県小浜市の神明神社に行っていたというぐらいだ。福井県小浜市に伝わる、人魚の肉を食べ、いつまでも若く美しいまま八百年を生きたという八百比丘尼の伝説では、いつも白い椿の花を持っていて、全国を行脚し、貧しい人々を助け、椿の種をまき花を咲かせた後、
若狭に戻り、小浜の空印寺横にある洞穴に入り亡くなったと言われているが、八百姫神社が境内にあり、たくさんの椿の木がある神明神社(福井県小浜市青井)には、八百比丘尼が、60年間、そこに滞在していたと言われている。13年前の京都K女子大学の1級上の上級生たちが秋の学園祭で演じた「今に生きる比丘尼伝説」が事件の鍵を握るが、ここでも、八百比丘尼や椿の花が登場している。
本書ストーリーのテーマは、八百比丘尼伝説と椿の花で、福井県小浜市が、本書の中で大きく取りあげられているが、本書タイトルに「小浜線」の文字があり、著者の西村京太郎氏は、鉄道ミステリー、トラベルミステリーに定評があり、本書の中で、小浜線がどういう形で登場してくるのか興味があったが、本書の中で、十津川警部が「小浜に行くたびに不自由な、ルートだなと、思ってしまう。京都から行く時、どうしても、敦賀か東舞鶴で、乗り換えなくてはならないからである。小浜まで、京都駅から、直通の特急でも、走っていればと思うのだが、それがない。小浜線は、全線が電化されているのに、どうして、特急が、走っていないのだろうか?」と、ぼやいている。普通列車のみが走るJR小浜線(1922年12月全線開通)は、京都府の東舞鶴駅と福井県の敦賀駅を走る路線で、両駅を含み全24駅。本書では、敦賀駅から小浜線に登場人物が乗車し小浜線を走るというシーンは無く、登場人物の十津川直子が、京都から京都発10時25分の「特急まいづる3号」に乗り、襲爵の東舞鶴駅に12時01分に到着。東舞鶴駅から13時35分発の小浜方面行きの普通電車に乗ると言う形で、小浜線が登場。ちなみに、小浜線24駅中、始発の東舞鶴駅からは、京都府の松尾寺駅、福井県内の青郷駅、三松駅、若狭高浜駅、若狭和田駅、若狭本郷駅、加斗駅、勢浜駅、小浜駅と、小浜駅は10駅目。小浜線の電化は2003年。海を通じた若狭小浜と丹後舞鶴との近接さにも注目。
目 次
第1章 京都の夜
第2章 奇妙な椿の花
第3章 思い出の椿の花
第4章 女の嫉妬
第5章 直子狙われる
第6章 四人目の死者
第7章 小浜線に死ぬ
<主なストーリー展開時代>
・具体的な年代は記載なし(十津川警部の妻・直子が大学3年が13年前)*確実なのは小浜線電化の2003年以降
<主なストーリー展開場所>・
・東京 ・京都(京都市・舞鶴市) ・福井県(小浜市)
<主な登場人物>
・十津川警部(東京生まれ東京育ちの警視庁捜査一課の警部)
・十津川直子(十津川警部の妻。大阪に叔母がいる)
・金井冨美(京都在住の西陣にアトリエを持つ日本画家。十津川直子の京都K女子大の同窓生5人組の1人)
・花村亜紀(十津川直子の京都K女子大の同窓生5人組の1人。京都の新京極通りで夫と二人で骨董の店を出している)
・後藤久美(十津川直子の京都K女子大の同窓生5人組の1人。小学6年生の娘がいる)
・三原敏子(十津川直子の京都K女子大の同窓生5人組の1人。独身で京都で家具の輸入販売の会社「三原交易」を経営)
・花村亜紀の夫(花村亜紀より10歳年上で、京都の骨董商)
・花村亜紀の夫の兄(京都の骨董商)
・後藤久美の夫(後藤久美より5歳年上で、フリーのカメラマン)
・金井富美の夫(洋画の画家)
・金井敬伯(金井富美の父親でプロの有名な日本画家。酒と女にだらしなく多額の借金を残し2年前に山陰の海に投身自殺)
・三条恵美(京都K女子大の直子たちの1年上の最上級生。京都の料亭の娘。学園祭の後に謎の飛び降り自殺)
・三条恵美の父と悦子という母(京都・嵐山の渡月橋近くのかなり大きな料亭を経営)
・相原樹里(京都K女子大の直子たちのグループと張り合っていたグループのリーダーで同学年の学生。京都市内の大きな旅館の娘)
・相原剛(相原樹里の父親。京都の老舗旅館経営。資産家で京都の有力者、仁和寺の近くに別荘)
・三上本部長(警視庁捜査一課で十津川警部の上司)
・亀井警部(青森生まれの警視庁捜査一課の十津川警部の良き相棒)
・西本刑事(警視庁捜査一課の「十津川班」刑事)
・日下刑事(警視庁捜査一課の「十津川班」刑事)
・北条早苗刑事(警視庁捜査一課の「十津川班」刑事)
・三田村刑事(警視庁捜査一課の「十津川班」刑事)
・安田警部(京都生まれの京都府警)
・京都府警の刑事たち
・京都・三条警察署の生活安全課の警察官
・三浦警部(福井県警小浜警察署)
・東京・新宿のMホテルのフロントマン
・東京・新宿のMホテルのルームサービスの女性
・京都の三原敏子の自宅兼会社のあるマンションの管理人
・東京駅の中の花屋
・福井県小浜市の神明神社の氏子
・京都の北にある大きな寺の70歳近い住職
・杉浦(京都の北にある大きな寺の檀家の子孫で、寺の近くでみたらし団子を販売する中年男性)
・芦田信一郎(F大学の教授で植物学者。京都の郊外、西山に住んでいる60代の教授)
・京都K女子大の事務局職員
・高木(京都・東山の雑居ビルの2階に入居する出版社「新しい京都」の雑誌の編集長)
・古橋(京都・東山の雑居ビルの2階に入居する出版社「新しい京都」の雑誌の編集者)
・小林(京都・太秦で時代劇のテレビシリーズの撮影をする70歳過ぎの映画監督)
・コンビニのチェーン店を経営している社長
・星川(京都市内にある芸能雑誌の出版社の編集長)
・田辺由布(13年前は23歳の女優で、その後も売れずにいる女優)
・水沼恵(13年前は18歳の女優で、その後、売れっ子となるが、一回り年上の俳優と結婚し、芸能界からの引退を宣言)
・高野美由紀(13年前は19歳の女優で、今はテレビドラマの準主役として、ちょくちょく出演)
・小田あかり(13年前は19歳の女優で、今はテレビドラマの準主役として、ちょくちょく出演)
・福井県小浜市内の海の見える高台にある病院の中年の医師
・中井(小浜線に乗務していた車掌)
・相原剛が顧問をしている会社の役員
・湯沢純一郎(京都府警本部の元警部でガンで死亡)
・湯沢佳子(湯沢純一郎の妻で、京都市内で大学生の娘とマンション暮らし)
・小浜漁港の漁師たち
・児玉由里子(京都堀川にある京都アートの社長で、ここでアルバイトをしてしていた相原樹里の友人)
・舞鶴の大きなマリーナの管理事務所の管理人
・小浜線の一両編成の電車の運転士
・小浜線の一両編成の電車に乗っていた中年の男
・小浜駅の若い駅員











