近江における北陸ゆかりの地「蝉丸神社」と「逢坂山関址」(滋賀県大津市大谷町)

近江における北陸ゆかりの地
「蝉丸神社」と「逢坂山関址」(滋賀県大津市大谷町)

(写真上:蝉丸神社(滋賀県大津市大谷町23-11)<*2023年11月23日午後訪問撮影>

蝉丸神社の由緒
当社は天慶9年(946年)蝉丸を主神として祀られております。蝉丸は盲目の琵琶法師とよばれ音曲芸道の祖神として平安末期の芸能に携わる人々に崇敬され、当宮の免許により興行したものです。その後、万治3年(1660年)現在の社が建立され、街道の守護神猿田彦命と豊玉姫命を合祀してお祠りしてあります。
これやこのゆくもかへるも わかれては しるもしらぬも あふさか乃 せき 蝉丸

平安時代前期の歌人の蝉丸は、百人一首に採歌された「これやこの行くも帰るも別れては知るも知らぬも逢坂の関」が有名だが、生没年は不明で、出自についても、平家物語には「延喜(=醍醐天皇)第四の王子蟬丸」という記載があるるものの、そのほかにも、いろんな伝承があり、その実在についても、はっきりしたことは分かっていない。蝉丸に関する史料はほとんど存在しないが、平安時代末期に成立した説話集「今昔物語集」には、59代・宇多天皇の第8皇子敦実親王の雑色を勤めたという記述があり、この今昔物語集では、琵琶の名手でもあった蝉丸は、のちに盲目となり、逢坂山(滋賀県大津市にある標高325mの山で、古代の頃には京都に入るための関所・逢坂関が設置)の関近くの貧しい家で暮らしていたとされているが、後に、世阿弥の作とされる能「蝉丸」や、近松門左衛門の浄瑠璃「蝉丸」などが生まれている。

一方、福井県丹生郡越前町陶の谷(旧・丹生郡宮崎村)には、蝉丸が、諸国を流浪の果て、越前に来て旧宮崎村地区の陶の谷にたどり着き、一軒の農家に滞在中に病気になりこの地に果て、蝉丸の遺言どおりに、この地域に建てられたという「蝉丸の墓」とされる石塔がある。この場所からすぐ近くの福井県丹生郡越前町(旧・宮崎村地区)舟橋には、「蝉丸の池」と呼ばれる場所が残り、この福井県丹生郡越前町(旧・宮崎村地区)には、蝉丸に関する伝承が残っている。ただ、蝉丸の没年や没地に関しても、『寺門伝記補録』や『関清水神社由緒書』には、天慶9年(946)9月24日に逢坂山(滋賀県大津市にある標高325mの山で、古代の頃には京都に入るための関所・逢坂関が設置)の麓で亡くなり関明神に合祀されたとされているが、はっきりしたことは不明。

滋賀県大津市大谷町に蝉丸神社があるが、近くの関蝉丸神社上社、下社と併せて蝉丸神社と総称される場合もある。蝉丸神社(滋賀県大津市大谷町)の祭神は、音曲を始めとする諸芸道の祖神して信仰される蝉丸大神と、街道の守護神として信仰される猿田彦命(サルタヒコノカミ)を祀っている。尚、関蝉丸神社(せきせみまるじんじゃ)は、社伝によれば、弘仁13年(822)に小野岑守が旅人を守る神である猿田彦命と豊玉姫命を、逢坂山の山上(上社)と麓(下社)に祀ったのに始まるとされる。関蝉丸神社(上社)と(下社)は共に、滋賀県大津市逢坂にあり、猿田彦命を祀る上社の旧称は関大明神蝉丸宮で、豊玉姫命を祀る下社の旧称は関清水大明神蝉丸宮。蝉丸が逢坂山に住んでいたことから、その死去後に上社と下社に、歌舞音曲の神としても信仰され祀られるようになった。

(写真下:逢坂山関の案内板(滋賀県大津市大谷町)<*2023年11月23日午後訪問撮影>

逢坂の関(おうさかのせき)
逢坂の関の初出は、平安京建都の翌年延暦14年(795)に逢坂の関の前身が廃止されたという『日本紀略』の記述です。その後、逢坂の関は京の都を守る重要な関所である三関(鈴鹿関・不破関・逢坂関)のひとつとして、弘仁元年(810)以降、重要な役割を果たしていましたが、平安後期からは徐々に形骸化されその形を失ってきました。逢坂の関の位置については現在の関蝉丸神社(上社)から関寺(現在の長安寺のある辺り)の周辺にあったともいわれますが、いまだにその位置は明らかになっていません。

逢坂山関址と逢坂常夜燈(滋賀県大津市大谷町)は、蝉丸神社の近くにあり、逢坂の関は、百人一首でも、蝉丸の歌以外に、清少納言、三条右大臣の歌が詠まれていて、この3つの歌碑も近くに置かれている。”名にし負はば 逢坂山の さねかづら 人に知られで 来るよしもがな”(三条右大臣)と、”夜をこめて 鳥のそら音は はかるとも よに逢坂の 席はゆるさじ”(清少納言)

(写真下:逢坂山関址と逢坂常夜燈(滋賀県大津市大谷町)<*2023年11月23日午後訪問撮影>

(写真下:蝉丸、三条右大臣、清少納言の歌碑 <*2023年11月23日午後訪問撮影>

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