首都圏の中の北陸ゆかりの地「砂村新田跡と砂村新左衛門顕彰碑」(東京都江東区南砂)

首都圏の中の北陸ゆかりの地
「砂村新田跡と砂村新左衛門顕彰碑」(東京都江東区南砂)

砂村新田跡(東京都江東区南砂3丁目14) (*2023年4月16日訪問撮影)
地下鉄東西線南砂駅すぐ隣の南砂3丁目公園の北端に建てられている看板の史跡説明によると、
”砂村新田は、砂村新左衛門一族により開発されました。新左衛門は、越前国砂畑村(福井県鯖江市)の出身といわれ、一族の新右衛門、三郎兵衛、新四郎、新三郎とともに関東に移ると、野毛新田(横浜市)、内川新田(横須賀市)、そして当地の新田開発にあたりました。
この辺りは、海岸の低湿地で、島のように点在する寄り洲を核にして土地を造成したと考えられています。万治2年(1659)には、434石の新田が完成し、開拓者の姓をとって砂村新田と名付けられました。その範囲は、西は横十間川、南は海岸、東は中川にまで及び、(江東)区内で開発された新田のなかで最も広い面積を有しました。
砂村新田は、開発以来、特産の砂村ネギなどをはじめ、新鮮な野菜の供給地として、江戸・東京の台所を支えました。” <平成23年(2011年)9月 江東区教育委員会>

ここには、ただこの小さな史跡説明の看板が建つだけで、この場所から東に約600m離れた富賀岡八幡宮(東京都江東区南砂7丁目14-18)の境内に「砂村新田開拓者 砂村新左衛門顕彰碑」がある。
砂村新田開拓者 砂村新左衛門顕彰碑(*2023年4月16日訪問撮影)

「砂村新左衛門顕彰碑」の隣りに建つ「石碑の由来」には、
”福井県鯖江市出身の砂村新左衛門と、その一族が宝六嶋を拠点として、湿原や浮州を干拓と埋立てによって、砂村新田を万治二年(1659)に造成しました。その範囲は現在の南砂一丁目から七丁目までと東砂八丁目を含むほぼ全域に当ると伝えられています。私達が住む砂町の基礎を築いた偉大な開拓者、砂村新左衛門の遺徳を偲び、後世に永くその功績を顕彰するため、心ある人々の協力を得て同氏にゆかりの深い元八幡宮境内に記念碑の完成を見ることができました。平成十一年十一月二十一日建立 室橋昭謹書”
と、当時の江東区長の名前で、平成11年(1999年)建立の説明あり。

門前の「富賀岡八幡宮御由緒」掲示板には、
” 当宮は深川富岡八幡宮の元宮として、また、砂村総鎮守として広く知られており、その創建は古く、藤原鎌足の孫、藤原豊成卿が下総守に任じられ下向のみぎり、天平勝宝元年(749年)に創立された区内屈指の古社であります。
当宮と深川富岡八幡宮との関係は、この地が宝六島と呼ばれていた寛永初期、京より永代島に移り暫く当宮を拠点に活動していた長盛法師が、当宮に奉祭されていた「八幡像」を、深川八幡宮に移し勧請したことによります。この「八幡像」は、源三位頼政、千葉氏、足利尊氏、鎌倉公方基氏、管領上杉氏から太田道灌へと伝えられ、特に道灌より厚い崇敬を受けていたものであります。
享保年間には、境内に桜、松あわせて3万本が植えられ、8代将軍吉宗公お手植えの矢竹なども存在しておりました。この風光明媚な様子は江戸名所図会や安藤広重の名所江戸百景にも描かれ、当地が江戸の景勝地であった事を窺い知る事ができます。現在も境内には都内でも数少ない石造の富士塚や芭蕉句碑、鳳卵石などが残されています。
また、この地の由来は、万治2年に開拓者である福井鯖江の砂村新左衛門により新田開発が完成し、砂村新田と名付けられ砂村の地名が生まれました。
「御祭神」
応神天皇(誉田別皇) 比売大神 宇迦之御魂大神 外五柱”

尚、富賀岡八幡宮は、この付近一帯の砂村が埋め立てられた時(1659年の砂村一族による砂村新田開拓)に創建され、寛文5年(1665年)砂村の鎮守となったとされるが、深川の富岡八幡宮が創建されたのが寛永4年(1627年)に対し、砂村富賀岡八幡宮が、なぜ「元八まん」と呼称されるようになったのか、この謎に取り組んだ論考は、宝六島の論考とあわせ、『<ふるさと探求>元八幡と砂村新田』(関 清春 著、2011年1月発行)が詳しい。

 

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