京都における北陸ゆかりの地「相国寺の塔頭・瑞春院と水上勉」(京都府京都市上京区今出川烏丸東入相国寺門前町)

京都における北陸ゆかりの地
「相国寺の塔頭・瑞春院と水上勉」(京都府京都市上京区今出川烏丸東入相国寺門前町)

(写真上:瑞春院(京都府京都市上京区相国寺門前町)<*2023年11月22日午後訪問撮影>

瑞春院(ずいしゅんいん)は、臨済宗相国寺派・相国寺の塔頭で、室町幕府第3代将軍・足利義満(1358年~1408年)が臨済宗の僧・太清宗渭(たいせいそうい、1321年~1391年、師は雪村友梅(1290年~1347年))を相国寺に迎える為に雲頂院を創設したのが起源。その後兵火に遭い、亀泉集證(きせんしゅうしょう、1424年~1493年)が1484年に創設した瑞春軒と併寺となり、1788年(天明8年)の天明の大火によって焼失したが、弘化から嘉永まで(1845年〜1849年)の間に再建。その後客殿を棄却したが、1898年(明治31年)に再興完成し名称が瑞春院に変更。今日の瑞春院にいたる。

瑞春院は通常非公開だが、瑞春院の見どころは、方丈三方にある庭園とが表千家の不審庵を模した茶室「久昌庵」(名工・諸冨厚士氏作・寄進)、室町期の禅院風の枯山水の南庭の雲頂庭や、北庭は昭和の名庭で、庭園研究の権威、村岡正先生が相国寺開山、夢窓国師の作風をとりいれ作庭した池泉回遊式の心字池がある雲泉庭。さらに本堂の御本尊は6代将軍足利義教が寄進した平安時代の木像仏で、雲上来迎の姿は他に例を見ないものといわれる。

瑞春院は、臨済宗相国寺派・相国寺の塔頭の一つであるが、夢窓疎石(1275年~1351年)を開山とする相国寺(しょうこくじ)は、臨済宗相国寺派の大本山で、京都五山第二位に列せられる名刹で正式名称は萬年山相國承天禅寺。永徳2年(1382年)、室町幕府第3代将軍足利義満が花の御所の隣接地に一大禅宗伽藍を建立することを発願(創建)し、寺が竣工したのは創建から10年後の明徳3年(1392年)。幾度も焼失と復興の歴史を繰り返し、現存する法堂(重文)は豊臣秀頼の寄進で日本最古の法堂建築として1605年に再建されたものを今に伝えている。

かつては、壮大な敷地に50あまりの塔頭寺院があったと伝えられているが、今は相国寺の法堂を取り囲むように並ぶ境内十ヵ寺あまりの塔頭のなかで、瑞春院は、1919年、若狭(福井県大飯郡本郷村<現・おおい町>生まれの作家・水上勉(1919年~2004年)が、9歳~13歳まで雛僧としてここで修行し、その体験をもとに衣笠の架空の禅寺を舞台にした小説「雁の寺」を著し、昭和37年(1962年)直木賞を受賞したことで知られている。そのため、瑞春院は「雁(がん)の寺」とも言われている。水上勉は、1929年(昭和4年)2月、9歳の頃、相国寺128世独山玄義のもとで得度して瑞春院に入り、同年、室町尋常小学校(5年生)へ転校。1931年(昭和6年)3月、室町小学校卒業し4月 禅門立紫野中学校入学。が、1932年(昭和7年)の中学2年生の夏に脱走するが、連れ戻され相国寺玉竜庵・等持院と移り、その後還俗。

「京都遍歴」(水上勉 著、立風書房、1994年)での瑞春院についての記述
”ここは私が出家した寺である。若狭から9歳の時に入寺して、当時の住職山盛松庵和尚の弟子になり、やがてここで得度式をあげてもらい、名も集英(しゅうえい)となった。室町小学校(室町上立売を上がった地点にあった。のち第一室町小学校と呼ばれる)五年生に入学、尋常科を卒えると、般若林(のちの紫野中学)に入学し、13歳までいた。思い出のつきない寺である。いろいろ小説や、随筆にも書いたので、私にとって文学的にもここは根っこのようなものをもらった寺というしかない。”

” ・・・名門ともいえる瑞春院へ小僧に入った私は、辛抱して松庵師につかえておれば、まがりなりにも僧侶となれたはずだが、13歳の夏にここを脱走して帰らなかった。落第坊主である。なぜ脱走したか。子供の私に、これと言った理屈があるわけでもなかった。性来ひねくれたところがあって、和尚の慈愛がわからず、禅修行の根性がなかったのである。”

(写真下:瑞春院門前の案内板 <*2023年11月22日午後訪問撮影>

京都五山相国寺塔頭 瑞春院「雁の寺」 <案内板より>
[由緒〕本尊阿弥陀三尊仏(鎌倉時代)
足利義満公が一山派、雪村友梅禅師の法嗣太清和尚を相国寺に迎請する為、その禅室として雲頂院を創設。その後、雲頂院は兵火に罹り瑞春軒に合併。瑞春軒は亀泉集證和尚が1466年から1488年(文正・文明年間)の間に創設。亀泉集證は俗姓を後藤と言い雲頂院の上足・太清四世の法孫で能筆であり、虞世南(ぐせいなん)の神髄を会得し天竜寺に入寺、陰涼軒日録(おんりょうけんにちろく)を編集した僧録司(そうろくす)の権威である。寺字は天明年間に消失し、弘化から嘉永まで1845年から1849年の間、再建され今日の瑞春院に至る。
直木賞受賞の名作[雁の寺]の舞台として有名であり、作者の水上勉氏が雛僧時代を過ごした禅院である。
[庭園]
当院には今昔の庭があり、南庭を雲頂庭(うんちょうてい)と言う。室町期の禅院風の枯山水で、枯淡な趣と、公案的な作意が禅的世界を象徴している。北庭は昭和の名庭、雲泉庭 文化庁文化保護専門審査員・文化功労章を受章された庭園研究の権威、村岡正先生が相国寺開山、夢窓国師の作風をとりいれ作庭した池泉式庭園である。
[茶室]
表千家の不審庵を模して造られた久昌庵には、千宗左(而妙斎)筆の濡額が掛けられている。この茶室は数寄屋建築の名工として名高い諸富厚士氏の建築である。
[水琴窟」
千年の都、京都に数ある水琴窟の中で最も音色が良いと羨望される逸品である。
[寺宝」
御本尊 木像 阿弥陀如来雲上来迎像
衝立 雁の絵 幸田春耕筆
襖絵 雁の絵 上田萬秋筆 朱衣達磨 狩野常信筆
陶淵明 春秋山水図 三幅対 狩野探幽筆
獅子牡丹・鐘馗・竹に寅 三幅対 狩野安信筆
福禄寿・雪梅・月梅・三幅対 維明周
奎筆
金襖絵 孔雀 今尾景年筆
彫刻 蛙 伝 左甚五郎筆
「寄進」
茶室一棟「久昌庵」 諸富厚士氏

(写真下:上立売通の相国寺西門(入ってすぐの左側に瑞春院) <*2023年11月22日午後訪問撮影>

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