北陸の文学碑 「文学の故郷碑」<旧金沢市立馬場小学校>(石川県金沢市東山3丁目)

北陸の文学碑 「文学の故郷碑」<旧金沢市立馬場小学校>(石川県金沢市東山3丁目)

(写真下:「文学の故郷碑」と年譜案内板の全景(旧金沢市立馬場小学校敷地の前庭内)(石川県金沢市東山3丁目)、2024年9月23日午後訪問撮影)

(写真下:「文学の故郷碑」(石川県金沢市東山3丁目)、2024年9月23日午後訪問撮影)

石川県金沢市東山3丁目の金沢市立馬場小学校の敷地内の前庭に、1970年(昭和45年)11月22日、創立100周年記念事業として、「文学の故郷」碑を建立。川端康成(1899年~1972年)の揮毫で、同小学校の卒業生である、明治から昭和にかけて活躍した小説家の徳田秋声、泉鏡花、国文学者で歌人の尾山篤二郎の3人の文学者の名前と、徳田秋声、泉鏡花、尾山篤二郎の作品から、郷土にちなんだ一節が刻まれている。「文学の故郷」碑落成の時は、1968年にノーベル文学賞を受賞した川端康成自身が来校。尚、その3日後の1970年11月25日に、三島由紀夫の三島事件が起こっている。

この「文学の故郷碑」が建立された金沢市立馬場小学校は、旧暦・明治3年(1870)11月22日(西暦換算1871年1月)、小橋小学所として設立。その後、何度も校名は改称となるが、1873年に東馬場小学校と改称し、1877年に養成小学校(男児)と女児の学校に分離。

徳田秋声は、明治12年(1879年)、養成小学校(後の金沢市立馬場小学校)に、発育不良で1年遅れ入学。姉かをりに送られ登校。1年後には泉鏡花が同じ養成小学校に入学したが、知るに至らなかったという。明治16年(1883年)12月24日、養成小学校中等科4年後期を半年遅れで卒業。一方、明治6年(1873年)生まれで徳田秋声より2歳年下の泉鏡花は、明治13年(1880)に養成小学校(後の金沢市立馬場小学校)に入学し、明治17年(1884年)に卒業。養成小学校は、1892年(明治25年)に馬場尋常小学校と改名するが、明治22年(1889)生まれの尾山篤二郎は、明治28年(1895)に馬場尋常小学校第二学年に編入し、明治31年(1898)に同校を卒業する。1947年(昭和22年)4月には戦後の学制で、金沢市立馬場小学校に改名となり、2024年3月31日には、金沢市立明成小学校との統合により、153年の歴史を閉じ閉校となる。

徳田秋聲
飛騨境の山の色も漸く紫だって来る頃になると、・・夢香山(向ふ山)の谷々の根雪も、日に日に陽炎と共に消え去って・・・梅の枝が白い珠を綴るのであった。 ー光を追うてー
泉鏡花
荒海ながら、日和の穏かさに、渚の浪は白菊の花を敷流す・・・此の友禅をうちかけて、雪国の町は薄霧を透して青白い。 ー縷紅新草ー
尾山篤二郎
この浦の蓮の根を噛む ふるさとの 糸曳くはちす うら恋につつ  ー雪客ー

(写真下:「文学の碑」脇の看板(旧金沢市立馬場小学校北側敷地外)、2024年9月23日午後訪問撮影)

(写真下:「文学の故郷碑」脇の年譜看板(旧金沢市立馬場小学校敷地内)、2024年9月23日午後訪問撮影)

徳田秋聲 年譜
・明治4年(1871):金沢市横山町に生れる
・明治12年(1879):東馬場養成小学校(現金沢市馬場小学校)に入学
・明治16年(1883):同校卒業
・明治28年(1895):尾崎紅葉の門に入る
・明治29年(1896):処女作「藪柑子」を発表
「新世帯」「黴」「爛」「あらくれ」「蒼白い月」「風呂桶」「挿話」「足跡」「町の踊り場」「和解」「死に親しむ」「仮装人物」「勲章」「縮図」等 明治、大正、昭和の三代にわたって数々の名作を発表
・昭和12年(1937):芸術院会員となる
・昭和18年(1943):11月18日逝去  71才

泉鏡花 年譜
・明治6年(1873):金沢市下新町に生れる。
・明治13年(1880):東馬場養成小学校(現金沢市立馬場小学校)に入学。
・明治17年(1884):同校卒業。
・明治24年(1891):尾崎紅葉の門に入る。
・明治26年(1893):処女作「冠彌左衛門」を発表。
「義血侠血」「夜行巡査」「外科室」「照葉狂言」「黒百合」「湯島詣」「高野聖」「薬草取」「女客」「婦系図」「歌行燈」「國貞ゑがく」「眉かくしの霊」「縷紅新草」等 明治、大正、昭和の三代にわたって数々の名作を発表。
・昭和12年(1937):芸術院会員となる。
・昭和14年(1939):9月7日逝去 65才。

尾山篤二郎 年譜
・明治22年(1889):金沢市横安江町に生れる。
・明治28年(1895):馬場尋常小学校第二学年に編入。
・明治31年(1898):同校卒業。
・大正2年(1913):処女歌集「さすらい」を発表。
「明る妙」「野を歩みて」「曼殊沙華」「草籠」「白圭集」「平明調」雲を描く」「清明」「とふのすがごも」「雪客」等11冊の歌集を発表。なお和歌國文学の研究に従事し「西行法師評伝」「大伴家持の研究」等を発表。
・昭和26年(1951):芸術院賞を受賞。
・昭和36年(1961):「大伴家持の研究」で文学博士となる。
・昭和38年(1963):6月23日逝去 73才。

(写真下:閉校した金沢市立馬場小学校校舎(石川県金沢市東山3丁目)、2024年9月23日午後訪問撮影)

(写真下:金沢市立馬場小学校前庭の校歌の碑(石川県金沢市東山3丁目)、2024年9月23日午後訪問撮影)


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