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北陸を舞台とする小説 第19回 「越前・伊豆、惜別の殺人ルート」(金久保 茂樹 著)
北陸を舞台とする小説 第19回 「越前・伊豆、惜別の殺人ルート」(金久保 茂樹 著)
「越前・伊豆、惜別の殺人ルート」(金久保 茂樹 著、JOY NOVELS<発行:有楽出版社、発売:実業之日本社>、2004年3月発行)
<著者略歴> 金久保 茂樹(かなくぼ しげき)(本書掲載著者紹介・本書発行当時)
1947年、東京生まれ。紀行作家、料理評論家などを経て、1999年『龍の道(ドラゴンレール)殺人事件』(祥伝社)で作家デビュー。『長崎・京都、復讐の殺人ルート』『金沢・浜松、積怨の殺人ルート』(小社刊)『信玄街道 殺人事件』(廣済堂)などのミステリーのほかに、『四季の花火を見に行こう』(講談社)『蕎麦ーぐるり日本、地粉にこだわるそばの店』(ネコ・パブリッシング)など著者多数。
本書の著者・金久保茂樹 氏は、1947年(昭和22年)東京生まれで、雑誌記者、紀行作家、料理評論家などを経て、1999年『龍の道(ドラゴンレール)殺人事件』(祥伝社)で作家デビュー。デビュー作はじめ、最初は、写真記者の夏村優一郎シリーズであったが、その後は、事件マニアの旅行代理店に勤務する秋月顕一を主人公としたトラベルミステリーを何作も続けて発表。本書『越前・伊豆、惜別の殺人ルート』(2004年3月発行)は、推理作家デビュー後5年目の作で、東尋坊のある越前福井の三国町を中心に、城ケ崎海岸が有名な伊豆の伊東市もストーリーの舞台として絡んでくる書き下ろしトラベルミステリー。本書では、東京の銀座7丁目に本社ビルがある総合旅行代理店「WTA」調査室所属の秋月顕一が、事件の謎を解いていくが、秋月顕一は東京・北馬込に住む39歳独身男性。秋月顕一をサポートするのが、「WTA」企画部主任で28歳美人の美代川麗子に、「WTA」調査室の非常勤調査役で、55歳の元警察庁特捜部警部・黒岩勇二。全国各地で事件の調査をする上で、総合旅行代理店の名前が大いに役立つ様子に、主人公の設定に思わず納得してしまう。
ストーリーの発端は、3月10日夕方5時頃、福井県三国町の東尋坊から、東京・千代田区麹町で弁護士事務所を開いている49歳の男性が東尋坊から転落し遺体で発見される。事件マニアの総合旅行代理店「WTA」調査室所属の秋月顕一は、偶然、総合旅行代理店「WTA」の企画した「味覚の王様、越前かにと温泉巡りの旅」で、ツアーの一行とともに、偶然、東尋坊に仕事で来ていて、福井県三国町の東尋坊を遊覧船から眺めた後、福井県の芦原温泉に宿泊していた。しかも、秋月顕一は、東尋坊から転落死した被害者に見覚えがあった。以前自分が担当した旅行に参加していただけでなく、2月下旬からしばらく入院していた東京・大森の病院前で、同室患者の夫を見舞いに来た、病院を訪れるにしては派手な服装の美しい人妻と会いベンツで一緒に走り去る姿も目撃していた。更に、秋月顕一がツアーの一行と宿泊している同じ芦原温泉旅館で、その美しい人妻が、東尋坊転落死があった日の夕方6時頃にチェックイン手続きをするのを見かけた秋月顕一は、好奇心に駆られて事件を調べ始める。
まず、美しい妻の不倫に気付いたかもしれない同じ病院の同室に入院していた夫・富沢修二が怪しいと、富沢修二の自宅を、東京都大田区南雪谷で建築摂家事務所を自宅を兼ねて営んでいることを突き止め、静岡県伊東市の伊豆急行線伊豆高原駅が最寄り駅で城ケ崎海岸を見下ろす景勝地に建設中のリゾートマンションの設計の仕事が忙しいという話も聞きこんでくる。そして、秋月顕一は伊豆高原に向かい、ストーリーの展開は、伊豆とも関わりを持ってくる。伊豆高原では、富沢修二の容疑も晴れるが、その城ケ崎高原の吊り橋の袂に、花束が置かれているのを見つけ、2年前に、1人の50歳を過ぎた医者が、橋の袂から身投げをする事件があり、それから毎月の命日に、娘さんらしい若い女性が、花束を供えにくるようになったという話を、近くの土産物店を兼ねた茶店の60歳前後の店番の女性から耳にする。
一方、秋月顕一は、東尋坊から転落死した弁護士・石室健治の葬儀会場を、東急目黒線不動前駅近くの斎場に訪ね、そこで葬儀会場に飾られた花輪を眺め、「東京弁護士会」「聖星学院大学ラグビーOB会一同」といった献花先に続き、「越前三国高校同窓会一同」と記された花輪を見つける。「越前三国高校」は架空の名前で、実在の福井県立三国高等学校をモデルとしているはずだが、東京の弁護士・石室健治は、三国町の高校を卒業してから30年以上も経ち、生活の拠点が東京にあり、年に一度、三国祭りの時にしか、故郷の三国町には戻っておらず、三国町の神明2丁目(実在の町名)に、年老いた母親が一人で暮らしているだけという。秋月顕一は、再び三国町に向かい、三国の島岡鮮魚店主人で石室健治の三国高校時代の同級生の島岡恭一に会い、「三国祭りには、俺の人生の原点があるというのが、石室健治の口癖だった」と聞き、その背景と意味を、三国町神明3丁目在住の郷土史家・神山嘉介を紹介されて詳しく説明してもらうことになる。
本書の第3章のタイトルが「藩政時代から続く確執」とあり、その内容が気になるが、まさにこの部分が、福井県三国町の郷土史家・神山嘉介からの説明。九頭竜川の河口に開けた町でそ北前船の寄港地として栄えた三国港であるが、三国の町は福井藩領と丸岡藩領に分かれ、福井藩が九頭竜川に入ってくる船を、すべて三国港で改めを行い、三国港を福井藩の領地として独占的な商取引を認許したことで、三国港の下流に隣接していた丸岡藩領の滝谷地区とは、商業を巡り利害が衝突し、丸岡藩領の滝谷地区は、海運における利権を失い、遊郭を中心とした遊興地区としてしか存在できず。しかも、旧三国湊と古地図に記された地域が福井藩領で、江戸時代の中期辺りから、歴史ある三国神社の例祭で北陸三大祭の一つとして名高い三国祭りを主催し、明治に入り、同じ福井県三国町に統合されても、商業地として繁栄を誇った旧福井藩地区の人たちは、遊興地区だった丸岡藩地区の人たちを疎外してきた歴史が語られる。
40年前に起きた小さな出来事が発端で、その後の悲劇の連鎖を呼ぶことになるが、事件の真相には、事件の動機や背景とともに、時刻表やトラベルトリックなどアリバイ崩しや、殺害方法の謎の解明なども求められていく。「越前三国高校」以外にも「えちぜん鉄道のあわら湯のまち駅近くの福井県越前警察署」などの架空の名前も登場するが、これは元々芦原町にあり2004年3月あわら市発足に伴い福井県金津警察署から現在のあわら警察署に改名された警察署がモデルのはず。また、石室健治の実家や神山嘉介の家などは三国町神明2丁目・3丁目にあり、これらの町名は実在の地名。また、三国の南本町にある「性雲寺」が重要な役割で本作品に登場するが、「性雲寺」は架空の名前で、実在の三国町南本町(実在地名)の真言宗寺院で、朝倉氏や福井藩主松平氏の祈願所となった寺で、三国の豪商・森田家の墓所もある、由緒ある「性海寺(しょうかいじ)」がモデルと思われる。
尚、本書のストーリー展開時期については、ある年の2月下旬から三国祭りの時期の5月までの時期で展開する話となっていて、年代については明記はないものの、えちぜん鉄道あわら湯のまち駅が出てくることから、2003年以降の話と分かる。かつて京福電鉄が福井県下で運営していた鉄道事業を、第3セクター方式で2002年9月に設立されたえちぜん鉄道が受け継ぎ、2003年2月開業、営業開始は2003年7月で、えちぜん鉄道あわら湯のまち駅も2003年7月に名称変更(以前は京福電鉄芦原湯町駅)。また、芦原町が登場し福井県あわら市ではないことから、あわら市自体は、2004年3月に坂井郡芦原町と坂井郡金津町が合併して発足していることより、本書のストーリー展開時期も2004年3月以前の話と分かる。本書で登場する三国町は、本書発行(2004年3月)の後の2006年(平成18年)3月20日に、旧坂井郡の三国町・丸岡町・坂井町・春江町が合併し、坂井市が新設発足。なお、巻末に、筆者注で、本文中の列車等のダイヤは、作品の構想中の2003年12月のもの、との断りが記されている。
目次
序章
1章 謎を秘めたカップル
2章 城ケ崎海岸の花束
3章 藩政時代から続く確執
4章 真紀の行動
5章 追跡
6章 安楽死事件
7章 意外な告白
8章 少年時代の軋轢
9章 目眩
終章
<主なストーリー展開時代>
・2003年2月下旬~5月
<主なストーリー展開場所>
・福井県(三国町、東尋坊、芦原温泉、丸岡駅近く)・石川県(小松)
・東京(大森、銀座、大田区南雪谷、目黒線不動前駅、有楽町、渋谷、北馬込、京橋、東京駅)
・静岡県(伊東市の伊豆高原駅・城ケ崎海岸・伊東駅・伊東公園・松月院、熱海)
<主な登場人物>
・秋月顕一(39歳独身の総合旅行代理店「WTA」調査室所属で、東京・北馬込に住む)
・美代川麗子(総合旅行代理店「WTA」企画部主任で28歳で世田谷区玉川に独居)
・黒岩勇二(「WTA」調査室の非常勤調査役で、55歳の元警察庁特捜部警部)
・富沢修二(東京都大田区南雪谷2丁目で、建築設計事務所経営)
・富沢真紀(富沢修二の妻)
・石室健治(東京都千代田区麹町で弁護士事務所を開いている49歳で目黒区在住)
・前田宗一郎(芦原温泉「菖蒲園」支配人)
・桜田一郎(本社ビルが東京・銀座7丁目にある総合旅行代理店「WTA」調査室長で勤続約30年)
・新庄徳男(総合旅行代理店「WTA」社長)
・木村実警部(えちぜん鉄道のあわら湯のまち駅近くの福井県越前警察署捜査一課刑事で鯖江市出身)
・田中幸治警部補(福井県越前警察署捜査一課で木村警部の部下)
・石室健治の妻
・石室健治の母(80歳で福井県三国町神明2丁目で一人暮らし)
・出口(「芦原タクシー」運転手)
・石井(「芦原タクシー」運転手)
・大田区南雪谷にある富沢修二建築設計事務所の近所の40歳前後の主婦
・水谷孝夫(建設中のリゾートマンション「ライフケア・伊豆高原」建設現場監督)
・久保田(リゾートマンション「ライフケア・伊豆高原」建設工事の内装業者)
・城ケ崎海岸の土産物店を兼ねた茶店の60歳前後の店番の女性
・島岡恭一(三国の島岡鮮魚店主人で、石室健治の三国高校時代の同級生)
・神山嘉介(三国町神明3丁目在住の教育委員会顧問で郷土史家、元越前三国高校で社会科教師の後、校長)
・西田茂雄(「レンタカー加賀」小松空港営業所長)
・吉岡久美子(「財団法人東京建築設計連合会」太田支部婦人会幹事で、アート建築設計事務所)
・塩田美恵(東京・大森の国際大学病院の看護婦長)
・篠原美紀(伊東市内の梅原総合病院の看護師で伊東公園近くに在住)
・篠原美紀の住む静岡県伊東市の伊東公園近くのマンションの隣の部屋の60歳前後の女性住人
・篠原菊雄(東京・大森の国際大学医学部教授呼吸器科主任で2年前に城ケ崎海岸で53歳で自殺)
・石川(毎朝新聞社の社会部勤務で、秋月顕一の大学時代のゼミ仲間)
・三浦信一郎(毎朝新聞社の社会部医療班デスク)
・葉山吾郎(3年前、気管支喘息の発作で国際大学病院に運ばれ亡くなった50代の患者)
・JR北陸本線の丸岡駅近くの坂井中央公園近くに住む67歳の老人
・榊原功(伊東市内の梅原総合病院の検査技師)
・水原静香(伊東市内の梅原総合病院で、篠原美紀の同僚看護婦)
・石井百合子(篠原美紀の看護師養成学校時代の同級生)
・銀座の総合旅行代理店「WTA」本社ビル近くの中華料理店「昭和軒」の女将
・安田雲海(福井県三国町の「性雲寺」住職)